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野売免許状の龍朱印

 こちらは「菓もの類野うり免許状」とよばれる文書です。信玄が出したものと云われ、天文10年(1541)8月と記され、龍をかたどった印、龍朱印が押されています。
 このような文書の類は、甲州の西郡(にしごおり)と呼ばれる地域(現在の南アルプス市市域)で武田信玄の野売免許状としてたびたび報告されてきた御朱印状です。文献等で報告されたものを数え上げると、これまでに市内で9点ほど見つかっています。しかし、残念ながらこれらの朱印状は信玄の活躍中に出されたものではなく、文化6年(1809)10月以降に作られ流布したものであるとの学術的判断がされています
[「菓もの類野うり免許状 十五所澤登家所蔵」 天文10年8月]


○博アーカイブはこちら
 偽文書であるとする理由として、①用紙が戦国時代のものではない ②永禄九年(1566)からしか見られない筈の奉者をもつ印判状が、天文十年(1541)に小幡山城を奉者として出ている ③全体の文言や書止文言が異様 なことの3点を笹本正治先生が論文(『甲州商人の特権伝説をめぐる一考察』昭和62年「甲斐路第59号」山梨郷土研究会)に書いておられます。
[令和4年度ふるさと文化伝承館テーマ展「にしごおり果物のキセキ」での 「菓もの類野うり免許状」等の展示状況]
 笹本先生の偽文書判定ポイントを鑑みながら「信玄の野売り免許状」を見てみましょう。まずは②永禄9年以降からしか見られない筈の書式について。このような書式は『奉書式朱印状』とよばれるもので、信玄が永禄九年以降に改めた代表的な書式です。用紙を横半分に折らずに1枚をそのまま使い(竪紙)、印は日付の下に押され、その右わきにこの文書の担当者(奉者)の名前を記す形式をもちます。
 件の「菓もの類野うり免許状」はまさにこの『奉書式朱印状』の典型例で、『小幡山城 奉之』となっており、担当者(奉者)である小幡虎盛が免許状を発給したことを示しますが、龍を彫った信玄の印(龍朱印)が押されていることによって、この書状が信玄さまの命令をうけたまわって発給されたことを示しています。
 しかし、『奉書式朱印状』の書式を完璧に写して作成された書状も、そこに記された天文十年八月(1541)という、古過ぎる日付によって偽文書だと判断できてしまいます。天文十一年(1542)信玄文書が山梨県立博物館に所蔵されていますが、二つ折りの紙に文章の冒頭に印を押す書式がとられています。永禄9年以前の信玄文書には、奉書式朱印状の形式は存在しないのです。 そのため、菓もの類野うり免許状が天文十年の発給文書ならば、『奉書式朱印状』の書式であるはずがないので偽書とされるのです。時代に沿った信玄文書の書式変化を理解すると、そういった整合性についても判断ができます。
[「菓もの類野うり免許状 十五所澤登家所蔵(スキャン画像)」 天文10年8月]
 では次に、天文十一年(1542)の信玄文書に押された印影を観察してみたのですが、どうやらこちらも違うようです。「菓もの類野うり免許状」に押されていた印はどちらかというと各年代の信玄文書のうち、天文10年頃から20年後くらい、1560年以降の印影に似ており、文書に記された天文十年頃に押されていた印ではないようです。
 今回は、甲州は西郡地域に伝わる信玄の「菓もの類野うり免許状」なるものが、なぜ江戸時代後期に作られた偽書であるといわれるのか?笹本先生の学説に加え、まだ言及されていなかった印影に関する着眼点も踏まえて整理してみました。
 偽書と判断できるとはいえその完成度は非常に高く、原七郷の柿売人を取り巻く他地域との縄張り争いがいかに熾烈だったか、西郡商人の執念を物語る貴重な資料と言えるのは間違いありません。別の視点からいえば、文化6年頃に生きた先人たちにとって、すでに古典の人であった信玄様のご威光がかなり絶大であったことを裏付けます。結局、信玄の野売り免許状と呼ばれる類の書状は信玄が出したものではないわけですが、このような意味で、文化6年頃の社会や人々の心情を表す歴史的価値のある本物の書状と云えるのです。
[「菓もの類野うり免許状の印影 十五所澤登家所蔵」]

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