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時代で選ぶ - 昭和

湯沢のおんとうじんさん

甲西地区湯沢の北沢川のほとりに、ひとつぽつんと、石造物(甲西町誌には載っていない)が立っています。


○博アーカイブはこちら
偶然に通りかかった湯沢3組にお住いのフサエさんがこの石造物が祀られることになったいきさつを教えてくださいました。
この石造物には表と裏に「温湯神少彦命」「昭和六十年五月吉日三組」と刻まれています。 
フサエさんによると、この神様のことを「おんとうじんさん」と呼んでいるそうです。
湯沢3組で、どうしてこの神様をここに祀ることになったのか尋ねてみると、
昭和60年頃、組内の家で大黒柱であるような、地域の働き盛りの男の人が次々と若死にしてしまったのだそうです。「こんなことが続いて起きるのには何かわけがあるのかもしれない、組内にこれからも何か障りがあるのでは」と、残された皆の不安が募ったので、今の富士川町に住んでいた『おがみやさん』に、この地域を歩いてもらい、何か障りがないか視てもらったとのこと。おがみやさんは占い師さんのような人物で、当時『オテンジンサン』と呼んでいたのだそうです。
「今では3組のほとんどの人が、地域でそんなことがあったことなど忘れてしまったとおもうけどね。」とフサエさん。組の集まりなどで若い人たちが立派に育って、消防団などしてくれて活躍しているのを見ると、あの時の不穏な空気を思い出すと同時に、今の幸せを「おんとうじんさん」に感謝する気持ちが湧き、この場所を通るたびに、心の中でありがとうと言う時もあれば、手を合わすこともある、と話してくれました。
道端にずっと同じ場所で静かにひっそりと建っている石造物のもつ文化的価値は、石そのものだけではなく、この石に宿る神様だけでもなく、この石を拝み感謝するフサエさんのような人(地域住民)にもあるのでしょう。

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