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11.原方

暮らし・産業・文化

さいの神

野牛島集落の西はずれの小高い塚上に、「西の神地蔵」と呼ばれる板碑が南面して建てられている。高さ65センチメートル、幅27センチメートル、厚さ14センチメートルの安山岩製である。

頂部は三角形に造られ、その中央に阿弥陀如来を意味する梵字「キリーク」の文字が陰刻されている。頭部と下部を区画した3本の条線の下には、造立主旨が刻まれている。それによるとこの板碑は天文13年(1544)に、多くの信者が円明に入る(悟りに至る)ことを阿弥陀如来に祈願してたてられたものであるという。

すなわち、「西の神地蔵」と呼ばれているこの板碑の本尊は、実は地蔵菩薩ではなく阿弥陀如来なのである。銘文下の方形の龕部(がんぶ)に陽刻された像は、顔の形や衣などがいかにも地蔵風であるが、それは阿弥陀如来に地蔵菩薩が集合したためである。
さらに、この板碑には「西の神」も習合されている。「西の神」とは、村へ入ろうとする悪霊を防ぐ「塞の神」のことであり、道辻に立つ道祖神がそれである。この板碑には庶民の生活に浸透していたさまざまな信仰が幾重にも重なり合っているのである。

なお、造立主旨には八田村の語源となった「八田庄」の文字が見える。「八田庄」は中世に八田から白根、櫛形まで広がっていた荘園といわれるが、それに関する史料は少なく不明な点が多い。その中で「西の神地蔵」は、「八田庄」を記す最も古い史料であり、歴史史料としての価値も高い。

所在地/南アルプス市野牛島2616
所有者、管理者/野牛島区
指定年月日/昭和51年3月1日
備考/


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