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時代で選ぶ - 明治

『せんごく』と呼んでいた唐箕(とうみ)

[2023年2月開催の南アルプス市ふるさと文化伝承館テーマ展「ナニコレ!昔の道具」展における稲作の道具エリアの一部]
鎌(稲刈り) → 扱箸・千歯扱き・足踏み回転脱穀機(脱穀) → 唐箕(地域名:せんごく)(藁くずと選別) → 摺臼(地域名:するす)(もみすり) → 唐箕(地域名:せんごく)・万石通し(籾殻と選別) → 搗臼(精米) → 万石通し・ふるい(糠と選別) → 白米

稲刈りしてから白いお米になるまでに、想像した以上にいくつもの工程と道具が必要であることに驚きます。

○博アーカイブはこちら
[(写真上から)脱穀用具(扱箸・千歯扱き・足踏み回転脱穀機) ※最上段は麦穂と麦の脱穀に使う「鬼歯」を展示
扱箸(こきばし):2本の竹棒の片箸を藁で結んだその間に稲の穂先を挟んで籾を挟んで扱き落とす道具
千歯扱き(ぜんばこき):木製の台木に鉄の歯を櫛状に並べて固定したもので、歯と歯のすきまに稲や麦の穂を差し込んで引っ張ることで実を落とす(扱く)」
足踏み回転脱穀機:踏み板を踏むと金具が表面に装着された扱胴が回転するので、そこに手に持った稲束の穂を当てると、籾がはじけ飛んで落ちる仕組み]

少し詳しく脱穀の道具の時代的変遷をご紹介しますと、田んぼから「鎌(かま)」で刈った稲から、まず穂の部分だけを取り外して集める際にかつては一本一本の穂を「扱箸(こきばし)」でしごき落としていましたが、江戸時代になると「千歯扱き(ぜんばこき)」という鉄製の歯が櫛の目のように並んだ道具に稲束をくぐらせることで籾だけを集めるようになります。
[せんごく(唐箕(とうみ):風の力を使って穀物を選別する道具]
さらに、大正時代になると、「足踏み回転脱穀機」使用するようになりました。集めた籾にはまだ藁くずなどが混ざっていますので、「唐箕(とうみ)」で風を起こし、吹き飛ばしてきれいにします。
 さて、この唐箕(とうみ)という名の選別用具ですが、我が南アルプス市周辺地域では「せんごく」と呼んでいました。使った経験のある50歳代くらいまでの市周辺出身の方に、この道具の名前は何ですか?と質問すると、みなさん、「せんごく」とお答えくださいます。
釜無川を挟んだ東側の中央市や南部の市川三郷町付近の人からも「せんごく」の名を聞きました。山梨全県域で聞き取り調査をしたわけではないので断言はできないのですが、山梨県域内に、唐箕のことを「せんごく」呼ぶ文化が存在していたことは確かです。 
南アルプス市域では、梅の実のゴミ飛ばしにも昭和後期まで使用されました。
[万石通し(まんごくとおし):選別用具。斜めに固定した網の上をすべり落とすことで、籾摺りした後の玄米とそれに混ざっているまだ籾摺りされていない籾とをより分けたり、精白中の白米から糠(ぬか)やくず米を分離する。籾と糠のそれぞれを選別するため、目の大きさの違う網を付け替えて使用できるように網部分は着脱可能になっている。江戸時代発明された。また、全国的に「千石(せんごく)とおし」と呼ばれることも多いが、当地では「万石とおし」と呼んでいる。]
[するす(摺臼すりうす):籾摺りをする木製のうす。二人で上うす側面につけてある紐をそれぞれ持って時計回りにぐるぐるすると、上臼と下臼の間から籾殻と剥けた玄米がともに出てくる。]

 この写真のするすの上には、左から順に、籾→籾殻・玄米→糠・白米という精米過程の状態がわかるようにペットボトルに詰めてあります。
[展示中の蓑(みの)と草履(ぞうり)]
 精米の過程で取り除かれる藁や藁くず、籾殻、糠は、多くの家庭で生活必需品として利用されてきました。
 藁(わら)は蓑や草履お櫃入など藁を編んで様々な製品にうまれかわり、藁くずは馬や牛のエサになる他、紙などの資源になりました。
 糠(ぬか)も漬物を作るぬか床になったり、タケノコや山菜の灰汁をとるためにゆで汁に一緒に入れるのに使ったり、石鹸の代用品にもなりました。
[2021年12月甲西地区東南湖で行われていた燻炭づくりの様子。]
 籾殻(もみがら)はプラスチック製品がなかった時代の緩衝材として広く使われました。さらに、もみがら燻炭にすれば田に撒くことで土壌改良に役立ちます。
当時の精米工程は大変なようですけれども、昔の米作りには何一つゴミは無く、その過程で排出されるものは全て生活に必要とされるものになっていたのです。

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