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時代で選ぶ - 大正

猩々の人形と疱瘡神

 西南湖にある重要文化財安藤家住宅で行われる「安藤家住宅ひなまつり」では、貴重な横沢雛が飾られます。
甲州で明治大正期に多く作られた横沢雛には童子をモデルとした人形が一番多いのですが、他に、成人女性や男性、妊婦、長生きの象徴としての老夫婦、七福神などの神様などモチーフに多くのバリエーションがあります。

 その中でも、ひときわ異質なのが、赤い髪の中国の伝説の妖怪、猩々(しょうじょう)のお人形がです。
猩々は、能の演目にも真っ赤な装束で登場する中国の伝説上の生き物のことで、赤毛で人間のような容姿をしており、酒を好むとされます。
また、赤いものを嫌う疱瘡神を追い払うという伝承もあり、子供の健やかな成長を願って送られたものと思われます。


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 疱瘡とは天然痘のことで、南アルプス市域では、嘉永3年(1850)に幕末に藤田村の広瀬家によって予防接種が行われるようになりましたが、終息するまではたいへん怖い病でした。安藤家住宅で展示された猩々の人形は、おそらく明治か大正時代に作られたものでしょうが、、子供の命を奪う天然痘の脅威がまだ人々の記憶に新しい時代であったのでしょう。
 白根地区百々には、弘化三年三月(1846)に奉られたという神の石造物があります。 日本では昭和31年に撲滅された天然痘という病ですが、種痘が広まりはじめた明治期以降にも、撲滅するまで幾度かの流行があったようです。

 当時の人々は、最も恐れる疫病の一つであった疱瘡を神格化し、対抗するためのアイテムとして赤髪の猩々を飾ったり、石造物として具現化することでこれを鎮めようとしたと考えられます。

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