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西野農協の糖度センサー(現南アルプス西野支所)

最近は、スーパーに並ぶ果物に「糖度保証」のシールが貼られているものが増えてきました。
少々高めのお値段なのですが、ついついそちらに手が伸びてしまいます。果実を傷つけずに食べる前から甘さを保証できるなんて、ふしぎ~ですよね。
現在では、桃・林檎・梨・蜜柑といった多くの果物の選果に使用されている非破壊式の糖度センサーですが、最初は外見からではわからない食味のバラつきに悩まされていた桃のために開発されました。

昭和62年から山梨県と山梨県果実農業協同組合連合会(果実連)・三井金属鉱業株式会社が協同して開発がはじめられ、一宮と西野の農協で測定実験が行われた後、平成元年にさっそく本格導入したのは、旧白根町にあった西野農協(現南アルプス市)が最初でした。

「人工衛星から電波を発信して地球の鉱物資源探査をしている特殊光線を利用することで,桃を破壊せずに糖度を測定できるのではないか」
という話を三井金属工業の技術者から聞き、これに賛同した山梨県の果樹産業関係者とはじめたプロジェクトだったそうです。
ちょうど桃の出荷中だった8月1日に、世界で初めて平成元年に桃の非破壊式糖度センサーを導入したJA南アルプス市西野支所(導入時:西野農協)へ、現在の稼働状況を取材に行きました。


○博アーカイブはこちら
現在、導入されている桃の非破壊糖度センサーは、平成21年に導入された透過式と呼ばれるもので、
平成元年に最初に設置された反射式とは測定方法が異なり、より精度の高いものになっているそうです。

場内では、縦横無尽に張り巡らされたレールの上を、まるで回転ずしのように、一個ずつ黒い皿に乗った桃が流れていきます。
皿の中には桃の個体情報を記録するためのチップが入っています。
入荷した桃はまず目視によりキズなどないかチェックしながら皿に一つずつのせています。

皿に乗った桃が最初に通るのが、糖度を測るための透過式光センサーです。
このボックスの中で桃に特殊光線が当たり、個体ごとに数値化した糖度を皿に内蔵されたチップに記録していきます。
チップ入りの皿に乗った桃が流れ、糖度解析の次に⇒画像解析の順で,それぞれの測定機器が内蔵されたボックス内を通過していきます。
糖度解析の次に、桃が入っていくボックスでは色目と形状を画像判定しています。
画像はこちらのモニターで見ることができます。
2つのボックスを通過して糖度と色目と形状を数値化された桃が出てきました。
JA南アルプス市管内では西野の他、飯野、豊、櫛形、鏡中條の支所にこの装置があり、現在導入されている機器は平成21年に導入されたもので、透過式の非破壊糖度センサーです。
次にそのチップの情報をもとにルートが枝分かれして等級ごとのラインに振り分けられ、それぞれの箱詰め作業者に運ばれていきます。 糖度13度以上で色目と大きさ形状の点数が高いものは「エクセレント」という最高位の称号が与えられて出荷されます。
次に糖度11度以上の「特青○秀(トクアオマルシュウ)」→「特赤〇秀(トクアカマルシュウ)」、
さらに糖度9度以上の「青秀(アオシュウ)」→「赤秀(アカシュウ)」というようにランク付けしているそうです。
すべての桃は個体ごとに糖度・形状・重量・熟度が記録され、データ化されています。

そして、出荷した個々の農家にもその情報がすぐに伝えられる仕組みになっています。平成元年に西野ではじまった非破壊糖度センサーの実用化は、それまでの重量と外観のみの選果から、加えて、糖度も保証するという画期的なもので、これにより、「外見はよくてもまずい桃は一つたりとも出荷しない」という品質保証体制が確立しました。

いまでは、日本全国にこの体制はひろまり、日本果実の品質の高さが海外からも称賛されるようになっています。
しかし、一方で、一定の糖度に達しない果実は出荷されないので、うまい桃を作ることができない農家は淘汰されてしまうことになります。

そこで、西野農協では、開発初期段階より、「高糖度果実を生産する技術を解明するためにも糖度センサーを導入するのだ」という目的を掲げていました。

生産農家側でも糖度センサーの計測結果を最大限に活用して高糖度の桃を生産する農園の農事日誌を詳細に調べてその技術をマニュアル化するなど、さらなる品質向上を実現してきました。
機器開発技術者だけではなく、西野の生産者たちの一致団結した勇気と覚悟がなければ、糖度センサー導入プロジェクトは成功しなかったといえます。
パイオニア精神にあふれた西野地区の土地柄が平成のはじめにも受け継がれていたことを象徴するような事例の一つだと思いました。

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