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夏りんごの人工着色していた頃

昭和40年代まで市内白根地区の果樹地帯でも多く出荷されていた「りんご」。夏の暑い時期に栽培されることから「夏りんご」と呼ばれ、出荷前には温度と日光の加減を人為的に調節して、収穫した果実を赤く発色させる「人工着色」が行われていました。
人工といっても着色料や科学的な薬品は一切使用されてはいません。
[画像:個人所有(昭和36年撮影)]


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「りんごの人工着色」の装置は子供たちの遊び場にもなっていたようです。
[画像:個人所有(昭和36年撮影)]
当時のホンダ・スーパーカブにまたがった少年の写真。バックには、たわわに実ったりんご畑が広がっているのが見て取れます。
[画像:個人所有(昭和36年撮影)]
南アルプス市域では、危険分散思想による果樹の多種栽培が伝統的に引き継がれ、現在でも「さくらんぼ、すもも、桃、ぶどう、かき」の5種が、主要栽培品目となっています。そのような大正時代からつづく多品目栽培の歴史の中で、一時期のみで今はあまり作られなくなってしまった種目もあります。「メロンやネクタリン、キウイ」と並んで、りんごもその一つです。
 りんごは、昭和40年代までは多く出荷されていました。果樹栽培関係資料の中にも、当時栽培されていたりんごの品種名のスタンプや、木箱に印字するための金属製型が多数見られます。(文化財課所蔵)
地区の人に話を聞くと

「りんごを並べて水をかけて冷やし、青いりんごを赤くして出荷した」
「筵の上にりんごを並べて、水をかけて冷やしながら日光に当てることで、樹上になっているよりも早く、しかも均一に赤く着色させて、とにかく見た目第一で出荷した」
「砂を敷いて夏りんごを並べ、赤くして出荷していた」

など、昭和時代当時の記憶があるとのこと。東北や信州などの大産地よりも少しでも早く色づかせて、高値で売るための戦略だったと考えられます。
「りんごの人工着色の装置[画像:個人所有(昭和36年撮影)]」
この着色作業は、りんごが熟さないうちに採ってしまうせいもあって、見かけは赤くてきれいだけれども、その割にあまり美味しくないりんごだったのだそう。とはいえ、まだ残暑厳しい時期に、季節を先取りした真っ赤なりんごを市場に高値で出荷するという売り方は、やはり「『にしごおり果物』の伝統的販売戦略」と納得させられます。

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