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奉公袋を持つ出征兵とその家族

 昭和時代の戦争に関する資料のひとつ、奉公袋をご紹介したいと思います。まずは、櫛形地区上今井で今から80年ほど前に撮影された出征の時の家族写真をご覧ください。
[出征記念の写真:中央の出征兵は奉公袋を抱えている。(上今井五味家資料 南アルプス市文化財課蔵)]


○博アーカイブはこちら
 真ん中に写る出征する男性が大事そうに奉公袋を持っています。この袋は、中身がパンパンに詰まって膨らんでいる様子がわかりますね。
[奉公袋(南アルプス市文化財課蔵)]
 袋の中にこれからの陸軍生活で必要な荷物を全部入れて、この写真が撮影された直後に旅立っていったのでしょう。奉公袋の中に何を入れていたのか気になりますね。
[奉公袋:陸軍の兵隊が必需品を入れていた袋。中には、軍隊手帳、召集令状、貯金通帳などが入れられた。海軍の場合は応召袋といった。(南アルプス市文化財課蔵)]
 『応召ノ場合ニ携行スル品 一、軍隊手帳 勲章 徽章 適任証書 卒業証書 修行証書 印章  二、貯金通帳 三、私服結束用風呂敷及木札(住所氏名ヲ記入シタルモノ) 四、応召旅行用必要品及日用品』 在郷軍人は常にこれらを用意しておいたのだといいます。
[奉公袋の裏側にあるプリント (南アルプス市文化財課蔵)]
 住所氏名の記されたひも付きの木札は何のために入れていたのだろうかと以前から不思議に思っていたのですが、私服結束用に使用されたのですね。奉公袋裏の記載を読んでみてやっと謎が解けました。
[収蔵資料の奉公袋の中に入れられていたもの。(南アルプス市文化財課蔵)]
[軍隊手帳:陸海軍の下士官・兵に公布された手帳。(南アルプス市文化財課蔵)]
 軍隊手帳の冒頭には軍人勅諭(天皇から軍人への言葉)が記され、陸軍では暗記するようにと言われました。
[軍隊手帳(南アルプス市文化財課蔵)]
[軍隊手帳(南アルプス市文化財課蔵)]
 奉公袋の中にあった『召集令状受領後入隊迄ノ日華業務予定表』を見てみると、召集令状を受領した翌日には遺書まで書いて家事整理し、翌々日には出発入隊しなければならないという非常にタイトな時間割ですね。赤紙が家に届いてから入隊するまで、こんなにも時間が無かったなんて知りませんでした。
[奉公袋の中にあった『召集令状受領後入隊迄ノ日華業務予定表』(南アルプス市文化財課蔵)]

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