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昭和14年の福引き一等商品は何?

昭和14年(1939)のお正月に配られた引札(ひきふだ)をご紹介します。引札とは、明治期に多く作られ、配られた宣伝広告チラシのことです。
ご紹介する資料は、80年以上前に現在の南アルプス市飯野の倉庫町交差点の北にあった、麻野屋呉服店さんの配ったもので、主に旧正月の二日から五日までの四日間に開催する福引きについての引札です。
[「昭和14年倉庫町麻野屋呉服店引札」(西野功刀幹浩家資料・南アルプス市文化財課所蔵):このチラシには電話番号が記載されているので 、白根地区で昭和3年4月11日から電話交換事務が開始されたことを勘案して、卯年の昭和14年のチラシと判断した。]


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昭和14年の旧正月は西暦だといつなのか調べてみますと、西暦の1939年2月19日が旧暦の元日でしたので、福引きが開催されたのは西暦でいうと、1939年の2月20日~23日までということになります。そこで今から「84年前の福引き」景品の種目に注目してみたところ、大変面白いものが景品となっていることがことがわかりました。
[「昭和6年倉庫町大日本諸企業別明細図にある麻野屋呉服店の場所」(南アルプス市文化財課所蔵)]
書き出してみますと、

昭和14年福引景品種目
 □一等  蚕籠 五十枚づつ   2本
 □二等  桑籠 一個づつ    30本
 □三等  ふくさ 一本づつ   100本
 □四等  商品券金二十銭   200本
 □五等  商品券金十五銭   300本
 □六等  商品券金十銭    残全部

以上の品々が福引きの商品なんですが一等と二等の商品のビジュアルを、すぐイメージできる人は少ないのではないでしょうか?
これらは養蚕に必要な用具。古写真と収蔵品の画像からご確認ください。
[「昭和14年倉庫町麻野屋呉服店旧正月福引き景品種目」]
[蚕籠の古写真画]
[桑籠の古写真画]
[収蔵庫にある蚕籠:蚕を飼育する平かご(南アルプス市文化財課蔵)]
[収蔵庫にある桑籠:摘んだ桑を入れるかご(南アルプス市文化財課蔵)]
山梨県では、明治7年に甲府錦町に県営の近代的な勧業製糸場が建設されて以降、明治12年頃には、甲府を中心に器械製糸工場が県下に80ヶ所以上続出し、蚕糸業への関心が高まりました。全国的にも蚕糸業は国の殖産興業政策の筆頭格でした。
しかし、もともと江戸時代より煙草産業の盛んであった西郡(にしごおり)地域では、蚕に有毒であるニコチン成分を発する煙草と、蚕の食する桑葉の栽培が共存できないため、山梨県の中では蚕糸業への進出が後れていた感があります。旧南アルプス市域(にしごおり)で養蚕が本格的に盛んになるのは国の専売化によって当地の煙草産業が解体されていく明治37年以降です。
福引きの行われた昭和14年当時のにしごおりでは30カ所以上の製糸場が操業しており、近隣の村々では最も養蚕が盛んに行われていた時期です。麻野屋呉服店のあった倉庫町周辺にも、甲西社・サスイチ斉藤製糸場・有限会社在家塚生糸利用販売・巨摩郡是製糸場(郡是製糸山梨製糸)などの大製糸場がありましたので、麻野屋呉服店さんの店前には、それらの製糸場に通う工女さんたちが行き交っていたことでしょう。

昭和14年は第二次世界大戦が勃発する年ですが、まだまだ戦争の影響はそれほど無く、福引きで養蚕道具が当たったとすれば、大喜びで家族のみんなに褒められ、感謝されたのではないでしょうか?ですから、蚕籠(平かご)50枚も当たってしまっても、大丈夫だったのだと思います。しかし、この後昭和16年暮れになると、日本は太平洋戦争に突入し、最大の生糸輸出国であったアメリカを敵国としたので、蚕糸業及び養蚕は急激に縮小していってします。
また、「かいこ」という温度にも湿度にも敏感で繊細な虫を育てる養蚕は、女の人の仕事という観念が江戸時代からありましたから、呉服店という女性が多く利用する店での景品という点でも、この引札の記載内容はたいへん興味深いものです。
今回ご覧いただいた引札に書かれている福引き目玉景品は、昭和14年当時のにしごおりに住んでいた女性たちが、何を一番欲しがっていたのかを示す資料だと思います。
[「麻野屋呉服店で販売された「横沢びな」」(上今井五味家資料・南アルプス市文化財課蔵)]

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