Mなびコース一覧
  • 文化財3Dデータ
  • テーマ別デジタルアース
  • 動画データ

ご登録済みの会員様はこちらよりログインすることができます。

ログインID:
パスワード:

※アンケート・クイズへのご参加は会員登録が必要です。

ログインID、パスワードがわからなくなった方は、こちらにメールアドレスを入力して「再発行」ボタンを押すと、ご登録のメールアドレスへIDと再発行されたパスワードをお送りいたします。

メールアドレス:
  1. ホーム
  2. >種別・テーマで選ぶ - 暮らし
  3. >保寿社牛乳タイムス大正14年掲載のケーキレシピ

種別・テーマで選ぶ - 暮らし

保寿社牛乳タイムス大正14年掲載のケーキレシピ

保壽社牛乳店が毎月一回発行していた冊子「保壽社牛乳タイムス」をご覧いただきます。
保寿社は明治20年12月に土屋忠平が西山梨郡稲門村(現甲府市)の千秋橋南方に開業した搾乳業者で、のちに甲府市伊勢町に移転して昭和15年までの50年以上営業していた、県内酪農における草分け的業者のひとつだったようです。文献にも『甲府市の三大搾乳業者』と記されています。
[保寿社タイムス10月号 大正14年10月1日(湯沢依田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


○博アーカイブはこちら
この冊子「保壽社牛乳タイムス」の構成は、全5ページで4項目の記事で構成されています。
表紙をめくるとまずは「家庭日記」という項目で、襟や靴の手入れやネクタイの洗濯の仕方など主に洋装の手入れ方法が掲載されています。牛乳を毎日飲むような先進的な家庭の主婦には知りたい情報だったのかもしれません。
次の3.4ページには「牛乳の威力」という題で、農学士大川石松氏による寄稿があります。なんでも、「マツカラム博士によって証明された人類の生命に欠くことのできない溶油性ヴヰタミンと水溶性ヴヰタミンの二要素を摂取するには、バター脂を含む乳製品の摂取が適している」というようなことが書かれています。また、「『我国乳児の死亡率は世界一』であることと『我国の牛乳使用率は世界の文明国中で一番少量』であることには深い関係がある」と説いており、『牛乳は人類の生存に必要な総ての要素を完全に、具有している』と、牛乳を飲むことを推奨しています。つづく同じページの残りの部分には、「ほんとの両親」という小話が穴埋め的に掲載されています。
[保寿社タイムス10月号 大正14年10月1日 2.3ページ(湯沢依田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
最後の5ページ目には「おやつのごちそう」という魅力的なレシピ集が掲載されています。メニューは、2種の『グリッドルケーク』と『芋よんかん』『バタいも』です。興味深いそのレシピを以下に書き出しますと、

『グツリドルケーキ(原文ママ):メリケン粉 コップ三杯、牛乳 コップ二杯、ベーキングパウダー 大匙一杯半、玉子 一個、塩 茶匙半杯、バタ 大匙二杯、砂糖 コップ四分の一
メリケン粉、塩、砂糖、ベーキングパウダーをまぜ合して篩にかけ、玉子をよく泡立てせて加へ、牛乳をそろそろと加へてよく泡立て器でかきまはし、バタと融して加へます。フライパンにバタをひいてそのなかへまぜ合した材料を少しづつ流し込んで、まはりが焼けて来て真中が泡だらけになったらひつくり返して焼きます。鍋に引いたバタが少ないとこげつきます。かうして何枚も焼いて、焼きたてにバタをつけ、メープルシロップ(蜜のようなもので紅葉の葉の砂糖をとかしたもの)を上からかけて食べます。メープルシロップの代りに砂糖をかけてもよいので、これはハイカラなボツタラ焼のようなもので、朝食の代り、おやつには最も適してゐます。』
※「グツリドルケーキ」と原文に記載があるが、以降のレシピに(その二)とあるので、「グリッドルケーキ」が正しく誤植であると考えられる)

『グリツドルケーキ(その二):牛乳 コップ一杯、玉子 2個、御飯の温かいの コップ一杯、融かしたバタ 大匙一杯、塩 茶匙半杯、メリケン粉 コップ八分の七
御飯と塩との上に牛乳を注ぎ込み玉子の黄味をレモン色になるまでよくかきまぜて泡立たせて加えます。それへとかしたバタ及メリケン粉を加へ、玉子の白味を泡立てゝ加へたものを第一と同様にして焼きます。』

『芋ようかん:砂糖七十匁、さつまいも百匁、塩小匙半分
先づお芋の皮をむいて二分位の輪切りにし、水につけてあくをぬきます。鍋にはたっぷりの湯を煮たたせておきごく強い火でお芋の切ったのを、軟らかくなるまで煮、煮へたらザルにあけて湯を切ります。次に鍋の湯をあけてそれへお芋の煮たのを入れ、塩と砂糖を入れ、シャモジで芋をつぶしながらよくねり合わせ、指をふれてみてつかなくなったら重箱その他適宜な器に布をしいて、その上へねつた材料を入れ、上に布をかぶせて、その器のなかへはいるだけの板をおき、上から強い重しをかけ二時間ほどおくとかたくなります。それを取り出して適宜の大きさにきるのです。』

『バタいも:
フライパンにラードを引き、二三分の厚みに輪切りにした芋を両面から焼き、焼けたらバタをぬり砂糖をふりかけます。』

以上のように、この「おやつのごちそう」で紹介されている4つのレシピをみてみると、大正14年に一般家庭で材料をそろえて作るのが難しい憧れレベルの一品から、牛乳屋さんの紹介するレシピなのに乳製品すら使わなくて済むような庶民的なおやつまで4種類のものが紹介されています。
[保寿社タイムス10月号 大正14年10月1日 4.5ページ(湯沢依田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
中でも材料の異なる二種類が紹介がされているグリッドルケークなるものですが、検索してみると、「griddle cake(グリドルケーキ)」というものがヒットし、いわゆるパンケーキないしはホットケーキのことだとありました。パンケーキやホットケーキのようなものは、明治時代に日本に伝わったようですが、大正12年に日本橋の三越デパートでバターとメープルシロップを添えて提供されはじめたのが本格的な上陸だったようです。この大正14年10月号の「牛乳タイムス」でも、焼きたてにバタとメープルシロップを上からかけるとあるので、まさに当時の最先端かつ憧れのおやつレシピが載せられていたことになるのですね! 当時のほとんどの甲州人には未知の食材であったであろうメープルシロップは『紅葉の葉の砂糖をとかしたもの』と微妙な解説があって微笑ましいです。さらに明治期にドイツで開発されたばかりのベーキングパウダーもあって、きっと「このナンチャラパウダーっちゅう薬は何でぇ?」という感じだったのではないでしょか? 庶民に出来上がりを想像しやすいようにか『これはハイカラなボッタラ焼のようなもので・・・』とも記されています。

そのためか、グリッドルケーキ(その二)では、手に入りやすい材料ばかりでつくれるようなレシピが紹介されています。材料だけを見ると、甲州人にもなじみ深い「うすやき」の亜流みたいな感じがするのですが、作り方を読むと最後に卵の白味を泡立てたものを加えて焼くとあるので、ふんわり感を出すようにしっかりと工夫されたレシピなのだ感心させられます。
[保寿社タイムス10月号 5ページ「おやつのごちそう」(湯沢依田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]

最新のコメント

ログインしてこのスポットへのコメントをお願いします。
現在このスポットへのコメントはありません。