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月賦商店の通帳

こちらの資料は、櫛形地区上今井の功刀松太郎商店が大正時代に顧客向けに発行した帳簿です。「通帳(かよいちょう)」といって、江戸時代から昭和40年代初期くらいまで、日常の買い物の際によく使っていた帳簿です。近所にある馴染みの店で日用品や食料を買う時は、その店が発行したこの通帳を持って行けば、キャッシュレスで品物を購入することができました。買ったものの日付や商品名、値段を記入してもらい、その代金は、月末や盆暮れ、コメや繭の収穫時などのまとまったお金が入る時期に支払います。
[「功刀松太郎商店通帳(大正)表」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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[「功刀松太郎商店通帳(大正)裏」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
[櫛形地区上今井にある功刀松太郎商店(2020年6月16日撮影)]
[「功刀松太郎商店 通帳(大正7年~8年)」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
購入品目として米や酢・煮干し・鱒(マス)等食料品のほかに、下駄やチリ紙・付け木などの雑貨消耗品が列記されています。値段も書かれているので、大正時代の物価を知ることができます。また、季節ごとに異なる購入品目の違いから、日常の様子や様々な年中行事等に伴う生活の実態もうかがい知ることができます。
[「功刀松太郎商店 通帳(大正7年~8年)」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
また、現金で支払いをした日付には店の印が押されています。掠れていて見難いですが、この印からは、大正時代当時の功刀松太郎商店の情報を得られそうです。この通帳のところどころに押された印を見比べて、文字を読み取って行こうと思います。
[「功刀松太郎商店 通帳印 『呉服太物本□瓦月賦商 証貸 中巨摩郡豊村上今井(大正7・8・9年)」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
通帳内に押されたいくつもの印影を並べてみると、掠れて読めずにいた箇所がある程度判りました。まずは外枠にある文字を右から左に読んでいくと、『呉服太物本□瓦月賦商 中巨摩郡豊村上今井』とあります。□の一文字はどうしても読めないのですが、『証』という字かもしれません。真ん中には、屋号の下に『功刀商店 証貸』とあります。
ここで、『月賦商』『証貸』という聞き慣れない言葉を調べてみたいと思います。
月賦商(げっぷしょう)とは、代金を一度に払わずに、分割して月ごとに支払うことを条件にした販売方法をとる店のことをいいます。先に代金を支払う前払い式と後から代金を支払う方式があり、明治時代以降に普及したようです。
また、証貸とは、証書貸付の意味で、店が借用証書をとってお金を貸すこと(融資すること)です。
このように印影の文字情報からは、この功刀松太郎商店が食品も扱うよろず屋さん的な商売以外に、銀行のような貸付業務も行っていたことがわかりました。
この通帳を使っていた津久井家の場合は、店印の押された箇所に、『〇〇円御預り申事』と記されており、買った商品の代金とは関係なく、お金が入った時にまとまった額を預けておいて、その預金から購入商品の代金を引き落としてもらっていたようです。いまの私たちが電子マネーで買い物をするのと同じですね。
さらに功刀松太郎商店は、証貸業務もしているということですから、預け入れてある金額を超過するような買物をしたい時や融資を頼みたい時は今の銀行のように対応してもらえたということですね。
今回は、この通帳をじっくり観察したことで、上今井にあった功刀松太郎商店が銀行業務も併せて行っていたことが判りました。
[「功刀松太郎商店 通帳印 『呉服太物本□瓦月賦商 証貸 中巨摩郡豊村上今井(大正7・8・9年)」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
豊村は明治38年にそれまでの主産業であった煙草産業から蚕糸業へと転換を図り、大正時代には、一般家庭でも新規にはじめる養蚕の設備や器具等への投資で幾らかの資金が必要になる状況があったと考えられます。そのような情勢の中で、起業家や投資家などが使用する大手銀行とは別に、近所の雑貨店が比較的些少な金額を融資する証貸業務も行っているのは、とても便利なことだったと思います。
[「功刀松太郎商店 通帳(大正7年)」(上今井津久井家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]

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