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明治大正期の商店の引札

明治大正期の引札(ひきふだ)をご紹介したいと思います。 引札は明治大正期の商店の広告チラシのようなものですが、色鮮やかでデザイン性に富み美しいので、お正月の初売りなどにおまけとして客に配られました。
こちらは、明治大正昭和初期には西郡地区一の繁華街であった小笠原にあった金丸商店の引札です。金のなる木に登って小判をザクザク集めている男女に日の出、鶴亀というような、いかにも縁起と羽振りのよい図柄です。この商店で売っているものは「米穀食塩石油荒物和洋酒罐詰諸帳簿その他雑貨」とかいてあります。屋号は「ヤマに〇」。
[「米穀食塩石油荒物和洋酒罐詰諸帳簿其他雑貨 小笠原金丸商店 引札26×37.2㎝(上今井津久井家資料明治・大正時代)」(南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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小笠原にはもう一店同じ名の金丸商店があります。明治35年頃のもので、名前は同じですが、屋号や販売品も「カネに丸」「呉服太物類?和洋綿糸染糸類」で異なっています。場所はヤマに〇屋号の金丸商店の北に隣り合って軒を連ねていたようです。
[南アルプス市役所本庁舎東にある旧金丸商店跡(2020年2月13日撮影)]
今回ご紹介している引札の「ヤマに〇」の屋号を持つ金丸商店は、現在は閉店されているようですが、平成15年頃の住宅地図を見てみると、『金丸砂糖店』という表記になっていますので、明治時代末から平成時代まで営業されていたのです。
[旧金丸商店跡の瓦に残る屋号は引札と同じ「ヤマに〇」(2020年2月13日撮影)]
次は甲西地区にあった商店の引札をご覧ください。全体的に黒を基調とした落ち着いた色合いで、これもまた素敵です。引札に記された文字情報によると、功刀琴四郎商店はお茶屋さんの看板を上げながら質屋も営んでいた模様です。引札の左端には明治34年7月10日印刷と記されています。五明村は現在の甲西地区になりますので、当時の櫛形地区上今井に住む人の買物圏を知る手掛かりになります。
[「諸国銘茶並質屋業 五明村功刀琴四郎 引札」26×37.7㎝(上今井津久井家資料・明治・大正時代)(南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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明治大正期に数多く出回った引札は、図柄にこそ地域性はあまりないのですが、そこに記された商店の文字情報によって当時の商店の所在や販売品、それらを利用した人々の動きや生活が復元できる文化財的価値の高いものです。

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