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内国勧業博覧会に出品された南湖の綿

山梨県下一のブランド、「奈古白布(なごのはくふ)」。「奈古(胡)」とは、現在の南アルプス市域南部の甲西地区南湖(なんご)のことを指します。
 南アルプス市には、栽培した綿の実から種を取り除く道具である「実繰り(みくり)・綿繰り」などと呼ばれるもの、また種を取った綿から回転する動力を使って糸を紡ぎ出す作業を行う「糸車」、この二つの民具を中心に綿仕事関連の民具が数多く残されています。特に県下一の綿の産地、甲西地区ではどの家にも一台ずつは持っていた道具だったのでしょう。


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綿繰り・実繰り:ワタの実から種を取り除く道具。二つの反対に回るローラーの間にワタの実を食い込ませると、ワタの繊維の部分が向こう側に落ち、ローラーを通過しない種だけが手前に落ちる。

綿打弓(写真右):ワタの繊維を柔らかくほぐす作業に使う、弓状の道具。弓の減の振動でワタをほぐす。各地に綿打屋があった。

よりこ:綿打ちしをして叩きほぐしたワタの繊維を薄い膜状にしたものを、巻いて円筒状にしたもの。この後、糸車にかけて紡がれる。

南湖は、釜無川の洪水流が運んだ砂質の土壌からなり、夏季の高温・少雨な気候が綿花の栽培に適していたため、江戸時代に編さんされた地誌「甲斐国志」にも、『奈胡白布ト云ハ木綿ノ好キ処ナリ 本州(甲斐国)ノ産ハ其色絞白ニシテ綿強シ、巨摩、山梨、中郡多且ツ美ナリ、奈胡ノ庄最モ多産トス』と記されています。
明治23年に、東京上野を会場に開催された第三回内国勧業博覧会に、南湖村の実綿を出品した際の褒状も残されています。南湖産の実綿を、『品質佳良ニシテ需要ニ適ス頗ル嘉ス可シ』という文言で評価しています。
当時の勧業博覧会は、政府主導で、国内の産業発展を促進し、魅力ある国外輸出品を育成する目的で開催されました。第三回勧業博覧会は、入場者が百万人を超えたといわれています。
「奈古白布(なごのはくふ)」と云われた南湖村の木綿は、品質のよいものとして、明治時代においても近隣地域でその名が知られていましたので、山梨県の代表物産の一つとして選抜され、出品されたということです。 褒状の記載を見ると、出品者は現在の田島区の、小田切家だとわかります。
 小田切家は同時期に藍玉の取引も行っていたようで、明治21年の「藍玉通(あいだまかよい)」という帳面も残されています。この資料の中に、阿波藍の豪商三木家の東京支店から藍玉を購入した形跡もみられました。富士川舟運によって江戸から運ばれた藍玉が鰍沢河岸で荷揚げされ、南湖の小田切家を経由して、当産地の綿を染めていたということが判ります。

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