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ごはんに関わる民具あれこれ

ご飯を炊いてから食べるまで入れておく道具のお話をしたいと思います。
[・竈(かまど): 鍋・釜をのせて煮炊きに使用する場所。「くど」「へっつい」ともいいます
・火吹き竹: 息を吹き込んで火力を上げるために使う竹筒
・付木(つけぎ): ヒノキ・スギ・マツなどの薄片の先端に硫黄をぬったもので、火種や囲炉裏の炭火などから薪や灯心などに火を移す時に使いました]
電気やガスが使われていなかった時代は、「かまど」に薪を燃やしてご飯を炊きました。伝承館に展示されているかまどの前には「付け木」と「マッチ」「火吹き竹」もセットしてあります。


○博アーカイブはこちら
かまどに据えて使うのに便利なのは、「羽釜」です。
[・羽釜(はがま): 胴部の周りにぐるりとつばがついているかまど専用の鍋。かまどにつばの部分がひっかかって設置するようになっていて、下から吹き上がる火力を無駄にすることがありません]
羽釜では湯も沸かしますが、飯炊きの場合は、上にのせた分厚い木蓋が炊きあがったご飯を十分に蒸らす役目もします。関東より北では、囲炉裏で自在かぎに吊るした鍋で「米を煮る」という文化もあったようですが、昭和30年代電気炊飯器が普及するまで、炊飯はかまどに羽釜で行っていました。
「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、ぶつぶつ吹いたら(ジュージュー吹いたら)火をひいて、赤子泣いても蓋とるな、最後に藁を一握りパッと燃えたちゃ、出来上がり」とは、釜炊飯の火加減の目安をたとえた言葉。
「はじめは釜の底だけ熱が加わって炊きムラが起きないように緩やかに火を入れ始め、中ぱっぱでは強火、吹きこぼれはじめたら火を弱くして、蓋をとらないようにしてしっかり蒸らした後、最後に余分な水分を飛ばすために藁を一握りいれる」と解釈すればよいでしょうか。
羽釜で炊きあがったご飯は「おひつ」に入れ替えて食事をする部屋に運びます。
[昭和20年代の食卓 南アルプス市教育委員会文化財課所蔵上今井五味家資料より]
冬の間はお櫃に入れただけではすぐに冷めてしまうので、さらに藁を編んで作った「お櫃入(おひついれ)」(いづめ)にいれて保温しました。
お母さんが忙しい時には、赤ちゃんをお櫃入に入れておいたこともよくあったようです。
夏の間は逆にお櫃に入れると蒸れて腐りやすくなるので、「飯籠(めしかご)」の中に布巾を敷いて入れました。晩までとっておくにはすえてしまわないように、風通しの良い日陰の軒先に吊るしておいたりもしました。
ご飯は炊いた時から時間がたつにつれて、粘り気がなくパサパサになり、まずくなります。おまけに暑い夏の間は朝炊いたご飯が晩にはすえてしまうこともあります。ごはんは、炊き立てが一番おいしいことを弥生時代から日本人は知っています。ですから、お母さんは一日に一回は飯炊きをしなければなりませんでした。しかも、飯炊きは火の調整が随時必要で、ふきこぼれたり焦げ付かぬよう釜から目が離せません。昭和30年代に登場したガス自動炊飯器は火の調節をしなくともスイッチ一つで自動に焚き上げてくれたので、画期的なキッチンアイテムでした。
いまは電気自動炊飯器のタイマー機能を使えば、朝晩2回に分けてごはんを炊くことも苦になりません。そもそも、かまども羽釜もお櫃もお櫃入も飯籠の機能もすべてを持つ電気自動炊飯器が、主婦のやっていたかまどの火の世話や炊けたご飯の移し替えなどの労力も無くしているわけですからすごいことです。

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