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昭和34年の甲西町水害

南アルプス市教育委員会文化財課所蔵の昭和34年災害資料より、今回は現在南アルプス市南部に位置する甲西地区での被害状況写真をご覧いただきたいと思います。 甲西地区は市内に降った雨や湧き出た水が集中する場所で、西側には崩れやすく急峻な南アルプスの山々がせまることから、釜無川右岸のいくつもの天井川が集まる常習水害地帯でした。台風7号と15号が山梨県内全域に大きな被害をもたらした昭和34年においては、その前に到来した台風6号も甲西地区五明耕地をすでに冠水させていたようです。
[「台風6号甲西町坪川決壊による五明耕地(宮沢前200町歩冠水状況)」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]
甲西町誌にある台風7号記述から残された資料写真を時系列に並べてみていきましょう。

甲西町誌(昭和48年刊)
p1609
『昭和34年8月14日本町を襲った台風第七号・・・・・
14日午前0時ころ : 
・富士川は増水はなはだしく、増穂橋付近において、一面に逆流して来て、県道浅原ー増穂線は東南湖の南部地点  まで浸水し、交通不能の状態となった。 
・そのうち宮沢前は湖のようになった。
[「釜無川の逆流甲西町」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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[「滝沢川決壊南湖地区の200町歩冠水」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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14日午前3時ころ :
・坪川は大明橋下でごうごうとしたすごい音をたてて五明耕地へ侵入した。続いて下流右岸が三カ所、左岸が二カ所欠壊し、見る影もない惨状に変わった。
[「坪川下流の決壊」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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・秋山川も山梨交通軌道付近で決壊し、見るみるうちに、軌道敷は激流に削り取られ、施すすべもなく崩壊し、電車線路は、100mにわたってさらわれ、空中にぶら下がる惨状を見るに至った。 此の濁流は国道52号線を横断して、長沢部落および耕地一面に浸水した。
[「7号台風時秋山川決壊により山交電車軌道も宙吊り」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵):甲西町誌にも掲載「秋山川の堤防決壊で宙吊りになった山交電車線路」]


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・堰野川は上流西新居部落に向って右岸が欠けくずれ、下流秋山川合流点付近でも左岸が決壊した。
・市之瀬川は、東落合の大橋が崩れ落ちた。
・井路縁川も満水、逆流し、西沼耕地などを湖のようにした。
[「坪川上流決壊五明地区150町歩」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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14日午前6時ころ : 
和泉万年橋の下流800mの地点で左岸が欠壊して耕地に侵入した。その崩落した土砂はたちまち八糸川の水路を一挙にうずめ、此の濁流は富士川の逆水とともに東南湖・和泉・西南湖の広い耕地を濁水でおおい尽くした。

14日午前9時 : 雨がやみ台風一過。60年来の大災害。人畜に被害はなかったが、天井川の中に位置する甲西町では、滝沢川・坪川・市之瀬川・堰野川等8カ所が大決壊し、埋没流失した耕地30町歩、浸冠水葯400町歩に及んだ。


甲西地区では、釜無川からの逆流による天井川の決壊を防ぐため、江戸時代から、より下流に合流点を付け替える「つきのべ工事」や、河川を立体交差させるためいくつもの樋門建設が行われてきました。昭和34年災害以降はその根本的改修と釜無川右岸土地改良工事がすすめられ、現在、2008年に完成した釜無川支流立体交差河川群(坪川・横川・滝沢川・五明川・長澤川・旧利根川)が甲西地区を逆流浸水から守っています。
[「15号台風時滝沢川状況」(飯野東条家災害資料甲西町10~16南アルプス市教育委員会文化財課蔵)]


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